「オフショア開発は安い」——そう聞いて検討を始める開発責任者は多いと思います。海外の開発チームに発注すれば、国内の半分以下の単価で人を確保できる。人手が足りない自社プロダクト開発にとって、魅力的に見えるのは自然です。

ただ、「安いから」だけで選ぶと、たいてい期待どおりにはなりません。この記事では、オフショア開発が効く場面と効きにくい場面、そして私自身が実際にたどり着いた「開発フェーズは海外・運用フェーズは国内」という使い分けの判断を、実務の経験から整理します。これから初めてオフショアを検討する事業会社の、判断材料になればと思います。

筆者(馬込)は、自社サービスの開発を海外のオフショアチームと進め、システムが一通り完成したあとは、国内で実際に使いながら運用・保守する体制へ切り替えた経験があります。この「作るのは海外、回すのは国内」という切り替えの判断が、本記事の軸です。

「安い」だけで選ぶと、なぜ期待どおりにならないのか

オフショアの単価が国内より安いのは事実です。ですが、単価の安さがそのまま「総額の安さ」になるとは限りません。

理由は、開発にはコミュニケーションのコストが必ずかかるからです。海外チームとの開発では、時差・言語・文化の差が、要件の伝達や認識合わせのたびに小さな摩擦を生みます。この摩擦を無視して「単価が安いから」と進めると、認識のズレによる手戻りが積み重なり、結果的に「安く済むはずが、やり取りと直しで時間がかかった」ということが起こりえます。

だからオフショアを検討するときの問いは、「単価が安いか」ではなく、**「コミュニケーションのコストを払っても、なお割に合う作業か」**です。この問いに答えられる作業と、答えにくい作業があります。外部リソース全般の選び方は「開発リソースが足りないときの外部活用ガイド」でも整理しています。

開発フェーズと運用フェーズを分けて考える

私がたどり着いた最も大きな判断が、これでした。オフショアが効くかどうかは、「開発フェーズ」か「運用フェーズ」かで大きく変わるということです。

フェーズ 求められること オフショアとの相性
開発(作る) 仕様に沿ってまとまった量を実装する 良い(切り出しやすく、量で効く)
運用・保守(回す) 実際の利用者の声に素早く反応し、細かく直す 悪くなりやすい(即応性・文脈理解が要る)

開発フェーズは、作るものが決まっていれば、まとまった量の実装を海外チームに任せやすい。ここは人数と単価が効くので、オフショアの強みが出ます。

一方で運用・保守フェーズは性質が違います。実際にサービスを使い始めると、「この画面の動きを少しこう変えたい」「この不具合をすぐ直したい」という、利用者に近いところでの細かい即応が増えます。ここは時差や伝達の摩擦がそのまま遅さになり、オフショアの相性が悪くなりがちです。

私が「開発は海外・運用は国内」に切り替えたのは、この違いを実際に経験したからでした。作り切るまでは海外チームの力が効き、使い始めてからは国内で回すほうが速い——フェーズで最適な体制が変わる、という判断です。

完成後、なぜ運用を国内に戻したのか

システムが一通り完成した段階で、私は運用・保守を国内の体制に切り替えました。理由は、運用フェーズで求められるものが、開発フェーズとは変わったからです。

  • 利用者の声への即応性:実際に使う中で出てくる要望や不具合に、時差なく素早く反応したい
  • 文脈の理解:「なぜこの仕様なのか」を分かった人が、その場で判断して直せる状態にしたい
  • 事業判断との近さ:運用の細かい優先順位づけは、事業を分かっている人の近くにあるほうが速い

これは「海外チームの質が低かった」という話ではありません。フェーズが変われば、最適な体制も変わるという話です。開発を安く早く進めるにはオフショアが効き、運用を止めずに回すには国内が効く。両方の良いところを、時期で使い分けたということです。契約形態の選び方は「準委任と請負の違い」も参考になります。

オフショアを検討するなら、先に決めておくこと

これから初めてオフショアを検討するなら、失敗を避けるために先に決めておきたいことがあります。丸投げが失敗を招く構造は「開発外注で失敗する5つの理由」と共通します。

  • どのフェーズを任せるのか:開発なのか運用なのか。まとまった実装なら向くが、即応性が要る運用は慎重に。
  • 要件をどこまで固められるか:仕様が固まっているほどオフショアは効く。流動的なまま渡すと手戻りが増える。
  • 完成後の運用を誰が担うのか:作って終わりではない。運用フェーズの体制を最初から想定しておく。
  • 国内側に文脈を分かる人を残せるか:全部を海外に預けず、判断できる人を国内に置く。

特に最後の2つが効きます。「作る」だけを考えて発注すると、完成後の運用で詰まります。ラボ型で継続的に体制を持つ場合の費用感は「ラボ型開発の費用・メリット・デメリット」にまとめています。

TechMateの役割——国内の技術パートナーとして

TechMateは、自社プロダクト/自社サービスを持つ事業会社の開発を、国内の技術パートナーとして月単位の準委任で伴走します。代表/PMの馬込浩を中心に2名以上の体制で、設計・実装・レビューまで手を動かします。

私自身が海外チームでの開発と、その後の国内運用への切り替えを経験しているからこそ、**「どのフェーズを外に出し、どこを国内で押さえるか」**を、実務目線で一緒に整理できます。オフショアで作ったものの運用を国内で立て直したい、あるいは最初から「開発は外・運用は内」で設計したい——そうしたケースの伴走が得意領域です。

料金は税抜の月額で、ライト60万円/スタンダード80万円/プロ160万円の3プラン。基本フルリモートで、最低2か月からのご利用を推奨しています。詳しくは料金プランを、関与の実例は実績をご覧ください。

よくある質問

Q. オフショア開発は、結局のところ安く済むのでしょうか? A. 単価は確かに安いですが、総額が安くなるかは「何を任せるか」で変わります。仕様が固まったまとまった開発なら、単価の安さが効いて割に合いやすい。逆に、要件が流動的なものや即応性が要る運用を任せると、コミュニケーションの手戻りで結果的に高くつくことがあります。安さは単価ではなく、総額とスピードで見てください。

Q. 海外チームに全部任せてしまってよいですか? A. 「作る」を任せるのは有効ですが、国内に文脈の分かる人を残すことをおすすめします。完成後の運用・保守は利用者に近いところでの即応が要るため、全部を海外に預けると、使い始めてから細かい調整で詰まりやすくなります。開発は海外、運用の判断は国内、という切り分けが現実的です。

Q. すでにオフショアで作ったものの、運用がうまく回っていません。どうすれば? A. 運用フェーズは開発フェーズと求められるものが違うため、体制の見直しで改善できることが多いです。まず「利用者の声にどれだけ速く反応できているか」を点検し、遅れているなら国内側で回せる体制へ切り替えるのが有効です。TechMateでも、オフショアで作られたシステムの運用を国内で引き取る伴走を行っています。


オフショア開発は、「安いから」で選ぶと期待どおりにはなりませんが、「どのフェーズで使うか」を見極めれば強力な選択肢になります。作るのは海外の力を借り、回すのは国内で押さえる——フェーズで最適な体制を使い分けることが、私自身の経験からたどり着いた答えでした。

自社の開発をどのフェーズでどう体制を組むべきか迷う段階でも構いません。開発体制のご相談から、お気軽にお問い合わせください。